Hyperliquid ETH · 保有状態からの解消予測

保有損益と保有時間から、まだ出ていない解消フローを予測できるか

確率の過信を直しても、損益・保有時間の追加価値はまだ確認できていない。両者の組合せを明示して学ぶ比較は実装・実行したが、基準モデルが未収束で、追加価値の採点には到達していない。

仮説・問いの流れ

同じ市場変動の下でも、誰がどれだけ持ち、どんな損益・保有時間にあるかで、これから出る解消売買が変わるのではないか。その差を既に観測できる価格・出来高・売買履歴より先に読むのが目的。

保有状態から価格へつなぐ仮説(模式図)

現在の損益・保有時間 → 次の10秒の解消確率 → 期待解消金額 → 買い/売りの偏り → 価格への追加情報

現在の比較対象は、理由を問わないtaker解消。板の取得やクロスマージンの追加ではなく、既存の保有状態と出来高を使う。

株式研究の損益×保有期間と売却行動の関係は以前から設計に含まれていた。一方、今回のETH・10秒先の確率予測へ移せたことは示せていない。新しい比較は、当初の発想を別物へ変えるのではなく、木に任せていた状態応答を明示して推定する。

確率の暴走を避ければ改善するか? 旧モデル比では改善した。

ただし、状態情報を加えた分の改善とは限らない。

損益・保有時間に独自の追加価値があるか? 浅い木では未確認。今回の明示的モデルは基準モデル未収束で判定未了。

何が当たるかと、別期間に残るかが未解決。

探索・分析

確率を直しても、保有状態の追加価値は確認できなかった

まず確認したかったのは、元モデルの極端な確率が不振の原因かという点。更新方式を替えると誤差は減ったが、その先に状態情報の追加価値があるかは別だった。

同じETHの既知ポジション秒で、旧モデル・平滑化木の状態あり/なしを比較した。確率の過信も罰するloglossは小さいほど良い。買いはショート解消、売りはロング解消に対応する。

買い方向の確率予測誤差:更新方式を替えると何が変わったか
0 → 0.012 logloss(小さいほど良い)元モデル0.011085平滑化木・状態あり0.00285616平滑化木・状態なし0.00288961

元モデルの棒は長く、どちらの平滑化木でも短くなった。一方、状態あり/なしの差は小さく、日単位の95%区間では改善を確定できなかった。

売り方向の確率予測誤差:更新方式を替えると何が変わったか
0 → 0.012 logloss(小さいほど良い)元モデル0.00574152平滑化木・状態あり0.00160204平滑化木・状態なし0.00151329

元モデルの棒は長く、どちらの平滑化木でも短くなった。一方、状態あり/なしの差は小さく、日単位の95%区間では改善を確定できなかった。

買い解消−売り解消の予測誤差:状態を加えた分は残ったか
0 → 650 十億USD²(小さいほど良い)元モデル583.967平滑化木・状態あり561.688平滑化木・状態なし557.379

両方の平滑化木が元モデルより短い一方、状態ありの棒は状態なしより少し長い。この比較では、状態追加による純解消フローの誤差悪化が日単位95%区間でも残った。価格や利益の図ではない。

検証記録
  • 元の実行
    • ETH28日学習/14日検証、既知ポジション秒を間引かない。旧LightGBMと非Newton平滑化決定木を同じ入力・ラベルで比較。
    • 平滑化木は深さ3/最大7葉/最小葉100行。31個の学習内分位点で分割、葉確率=(解消あり行数+学習全体の発生率)/(行数+1)。
  • 状態あり/なし
    • 損益・正負損益・保有時間・既知フラグ・MFE・drawdown・既知フラグを一群として加除。直前増減・方向・金額・出来高比は共通。
    • 旧比較の上流モデルには市場return・変動率・匿名売買フローを含めていなかった。今回それらを揃える比較とは別。
  • 結果の出典と不確実性
    • 保存済みC2 results.jsonに基づく実測図。実行commit 7e854e94。日単位対応付きbootstrap2,000回・95%区間。
    • 買い/売りloglossの状態追加効果は両方UNKNOWN。純解消フローMSEの状態追加効果はNON_SUPPORT。条件付き解消量は旧予測を固定し、価格・利益は未検証。

損益と保有時間の組合せを直接学べば、追加情報を取り出せるか

浅い木で改善が見えなかっただけでは、文献で想定した状態応答を十分に検証したとは言えない。今回は同じ確率モデルで入力を段階的に加え、どの追加が別期間の予測を改善するかを測る。

固定した比較の順序(設計の模式図・新結果ではない)

共通の市場・直近売買 M0 → 損益の曲線 M1 → 保有時間の曲線 M2 → 両者の組合せ M3 → MFE・drawdown M4

主比較は M0 と M3。M1/M2/M4は、どの段階で変わったかを見る診断用。

小さな正則化ロジスティックモデルで、損益とlog保有時間を連続な区分線形曲線として表す。形は決めつけず、利益側・損失側の反応も学ぶ。既存研究の未実行だった具体方式を比較するもので、新発見の仮説ではない。

検証記録
  • 対象・時計・分母
    • Hyperliquid ETH、事前markによる保有額10万USD以上。各秒の保有ポジションを観測し、次の10秒の理由を問わないtaker解消を予測。解消しなかった秒も残す。
    • 元の28日学習/14日検証、70秒の境界除外を維持。学習309,710,705行、検証164,121,730行/方向という原母集団との一致を検証する。行数は独立取引数ではない。
    • 学習 [1783814400000,1786233600000)、検証 [1786233670000,1787443200000)(Unixミリ秒)。既に確認した検証期間を使う開発比較。
    • source時刻までの情報を使う。public/ingest/発注/約定の運用遅延は未観測で、即時に取引できたとは置かない。
  • 基準モデル M0
    • 保有方向・log保有金額、過去10秒/60秒の増加量・解消量・taker解消割合・解消なし/履歴完全フラグ、log(1+保有金額/直前60秒出来高)、出来高ゼロ/完全フラグ。
    • 同時点の市場情報:過去1/10/60秒return、60秒変動率、10/60秒出来高、10/60秒符号付き売買比と出来高ゼロ/完全フラグ。将来や近傍時点への補間は禁止。
    • 含み損ポジションの市場比率は、検証したい損益情報が混入するので基準モデルには入れない。
  • 状態追加の順序
    • M1:M0+損益の曲線。M2:M1+log保有時間の曲線・既知フラグ。M3:M2+損益の曲線×保有時間の曲線(主候補)。M4:M3+MFE・drawdownの曲線・既知フラグ。
    • 連続な区分線形スプライン。区切りは学習内10/25/50/75/90%点、損益にはゼロも追加。同値の区切りは統合。利益側・損失側の傾きや形は固定しない。
    • 変換値だけは固定乱数42の学習200,000行抽出から決める。0.1/99.9%点の外側を数値安定化のため切り詰め、外側フラグを保持。学習・採点の行は間引かない。欠損は学習内補完+フラグで保持。
  • 確率モデル・最適化
    • 買い/売りを別々の正則化ロジスティックモデルで推定。全既知行を等しく扱う平均logloss+L2係数1e-6、切片は罰則なし。初期切片は学習全体の発生率、その他はゼロ。
    • 小分け読込みで目的関数と勾配を集計し、L-BFGSの実際の損失を確認する歩幅調整を使う。最大100反復、勾配∞ノルム1e-7、関数許容差1e-10。未収束は学習不成立であって負の研究結果にしない。
    • 検証期間で早期停止・確率補正・パラメータ探索をしない。密行列との目的関数/勾配一致と有限差分テストを保持する。
  • 採点と判定
    • 主比較はM0−M3のlogloss改善を買い/売り等重みで平均。UTC日を単位に2,000回、乱数42の対応付きbootstrap。95%区間の下限>0なら支持、上限≤0なら不支持、それ以外は不確か。
    • 各方向のlogloss・Brier、固定確率帯での予測確率/実発生率、日別寄与、日除外感度を並記。他の段階比較は診断用で、都合のよい勝者を主比較へ置換しない。
    • 元の条件付き解消割合を固定し、確率×解消割合×保有金額を同時刻に集約。買い−売りの解消金額のMSE/MAEでも比較。新しい価格予測の再学習とは別。

これから始まる解消を読めるのか、すでに始まった売買を追っているのか

旧モデルも平滑化木も、最初の分岐は過去60秒のtaker解消割合だった。そのため、損益・保有時間の効果が「すでに解消中だから当たる」だけではないかを切り分ける。

予測前の履歴で分ける(設計の模式図)

過去60秒:解消なし / 解消あり / 履歴不明 → それぞれで次の10秒の確率・解消金額を比較

どの群も元の分母に残す。後から解消した人だけを抽出する比較ではない。

学んだ関係が、別の日・口座でも残るか

平滑化木には、学習では解消が頻発していたのに、検証では頻度が下がる集団が残った。今回は状態応答の形と誤差の寄与を日・口座で調べ、学習内だけの関係と分ける。

検証記録
  • 始まり/継続
    • 過去60秒の解消量がゼロ/正で分ける。履歴不明は別群として残す。将来の解消有無で群を決めず、初回売却の生存分析とは呼ばない。
    • 学習内に決めた損益×保有時間帯で、分母・実発生率・予測率と状態なしモデルの残差を学習/検証で比較。単純な帯別率を市場調整済みの因果効果とは呼ばない。
  • 日・口座への集中と移転
    • 日別の寄与と最多観測口座を除く採点感度を確認。口座IDは予測入力にしない。除外採点をその口座を除いた再学習とは呼ばない。
    • 学習で見なかった口座の検証成績も分離し、支持不足なら不明とする。個別口座識別子は公開しない。
  • 基準・ずらし比較
    • 学習全体の平均発生率、市場のみ、匿名フローのみ、状態のみも比較する。
    • 同じ口座・同じ秒で状態情報だけを1 UTC日ずらして採点。対応できた時点だけで元のM0/M3も再比較し、母集団変更と情報をずらす効果を分ける。未対応は欠測として件数を出す。
  • 計算上限
    • CPU2、メモリ12GiB、swap1GiBの単独実行。ホストの利用可能メモリ6GiB/swap空き2GiB、所有プロセスのメモリ待ち率を監視し停止する。
    • この上限は結果の良否を決める条件ではない。安全停止と実測の不支持を区別し、完了モデルをチェックポイントへ保存する。

明示的状態応答モデルの実行結果

全学習行で実行したが、比較の基準になる買い方向モデルが規定の100反復で収束せず、今回の追加価値はまだ判定できない。損益×保有時間を加えたモデルとの比較結果ではなく、数値最適化の不成立で止まった。

学習309,710,705行/方向、検証164,121,730行/方向という元の母集団と入力を照合済み。板は必要条件にせず、出来高を使った。途中のメモリ待ちによる停止は読込み方法を修正して回避したが、その後も基準モデルの収束条件には届かなかった。

検証記録
  • 2026年9月16日の実行終了
    • 買い方向の基準モデルM0:100反復、全309,710,705行を使う目的関数評価117回。勾配∞ノルム1.6154255249786295e-5、指定目標1e-7。終了理由は反復上限到達。
    • 最終実行は資源監視による停止ではない。読込み修正後の77回の全行評価では、学習開始以降の所有プロセスの追加メモリ待ち時間はゼロ。終了した計算プロセスを確認した。
  • 未完了の比較
    • 買い方向M0は未収束。売り方向M0、状態追加M1〜M4、補助基準は未実行。M0対M3の検証logloss差、確率校正、解消金額、日・口座別、状態ずらし比較は未採点。
    • 反復数・許容差を後から緩めたり、学習行を間引いたりして成功扱いにはしていない。数値計算法の変更は、同じ目的関数と母集団を保つ対策として別版に記録する必要がある。
  • 既存結果との区別
    • 上の平滑化木の評価は実施済みで取り消していない。今回の未収束から、損益・保有時間に追加情報がないとは結論できない。

結果

現在、価格への追加予測力や費用後利益が改善したと示せる新結果はない。

今回の比較で事前指定した候補は、Hyperliquid ETHの10万USD以上の保有ポジションについて、各秒の事前損益・保有時間・直近売買と市場情報から、次の10秒のtaker解消確率を予測するM3。28日学習/既に確認済みの14日検証で、同じ市場・売買情報だけのM0との差を測る。

その確率を、元の条件付き解消割合と現在保有金額に掛けて買い−売りの解消金額へ集約する。出来高は流動性の代理として使い、出来高帯別の優位性を検証済みとはしない。

この候補の価格モデル、取引閾値、建玉サイズ、entry/exit、手数料・slippage・実運用遅延を含む売買評価は未実施。状態追加が確率と金額の両方へ残るかを先に判断し、有望なら未使用期間と価格への接続を次に固定する。

検証記録

洞察

元モデル比の改善と、ポジション内部情報の追加価値は分かれた。今回問うのは、同じ価格変動・直近売買の下でも、保有状態の違いから後続の解消が変わることを予測へ反映できるか。

学習内だけで差があるなら再現性、別期間でも差があるのに確率予測が改善しないなら推定方法、確率が改善して金額の偏りでは消えるなら集約段階が次の論点になる。現時点では、いずれか一つを不振の原因と確定していない。

Q&A

既存研究は最初から踏まえていたのか?

踏まえていた。9月4日のv2で損益スプライン×保有時間を指定し、9月8日のv3でその必須basisを継承せず浅い木へ替えた。今回の比較は、その設計選択を実測で点検する。

10秒や出来高の設定を変えて結果を探すのか?

変えない。現在の10秒対象・同じ対象期間と分母を維持し、板なしで比較する。今回変えるのは状態応答の表現と、それを比較する共通の市場対照。

追加価値が見えなければ、損益と解消に関係がないのか?

そこまでは言えない。今回の対象・条件で、既にある情報を超える予測改善が確認できないという答え。単純な関連と、条件を揃えた追加予測力を分ける。

研究上の根拠はどこか?

Ben-David・Hirshleifer(2012)の損益・保有期間と売却確率、Feng・Seasholes(2005)の売却までの生存分析が関連する。今回の10秒・部分解消・logitは直接の再現ではなく適応比較。Gensheimer・Narasimhan(2019)の離散生存モデルも今回の実装とは区別する。